神とともに

特集 クリスマスを盛り上げる脇役たち

クリスマスは、様々な飾りと共にやって来ます。クリスマスツリーやそこに飾られるオーナメントの数々。これらの飾りには、それぞれに起源があり、象徴としての意味が込められています。今号の特集では、このクリスマスを盛り上げる脇役たちのルーツに迫ります。

クリスマスツリーの起源

クリスマスツリーの起源は、現在のドイツにあたるゲルマンにあると言われています。冬になっても枯れない常緑樹は、キリスト教が普及する以前のゲルマンの民の中で、永遠の命のシンボルとして、冬から春にかけて家の中に飾られてきました。また、ドイツの山岳地帯では、モミの木に小人が住んでいて村に幸せを運んでくると思われていて、祭のときにはモミの木に卵や花やロウソクなどを吊るして、その周りを歌いながら踊る習慣があったといいます。木に隠れていた小人たちが、歌や踊りに喜んで木に留まり、村人たちのために力を貸してくれると信じられていたようです。この風習が、クリスマスツリーを飾る習慣の原型になったという説があります。

キリスト教に関連した話では、8世紀の聖ボニファスの故事があります。聖ボニファスは、ドイツのヘッセンでの宣教の最中、街に樫の巨木があるのを見つけました。樫の木には、雷・雨・農業の神であるトール神が宿るとされていて、ちょうど一人の少年が、その木に生贄として捧げられようとしていました。聖ボニファスは、樫の木を民衆の目前で切り倒し、代わりにモミの若木を新しい信仰のシンボルとして差し出したという話です。

クリスマスにツリーを飾った最も古い記録としは、1491年にドイツのフライブルクでパン職人の信心会が、聖霊救貧院にリンゴやナッツ類をオーナメントとしたツリーを飾ったという記述があるそうです。
また、16世紀のドイツにはこんな話もあります。厳しい冬の森の中、家路を急ぐきこりがふと夜空を見上げると、氷と雪をつけたもみの木が、きらめく星の光を浴びて、幻想的な美しさに輝いていました。それを家族に見せたくて持ち帰ったのが、ツリーのはじまりだという説です。

18世紀に入ると、アメリカで最初のクリスマスツリーが、ドイツからの移民によって飾られました。やがて、北欧やフランスにもその習慣は広がっていき、1841年にビクトリア女王の夫君であるアルバート公が、ウィンザー宮に飾ったことで、イギリスでも爆発的に広がっていきました。
日本で最初のクリスマスツリーは、1860年にプロイセンの使節オイレンブルグが公館に飾ったものだとされています。

クリスマスツリー・オーナメント

クリスマスツリーに飾られる様々な飾り(オーナメント)にも、意味や起源があります。
まず、ツリーの先端にひときは大きく目立つ星。トップスターと呼ばれています。これは、福音書にも出てくる東方の博士たちを幼子イエスのもとに導いた星とされ、希望や約束が守られた印などを表しています。星の代わりに玉を飾ったり、天使や聖人像を飾ったりする国もあります。

ツリーに飾られるベル(鈴)は、救い主の誕生を告げ知らせる喜ばしい音を象徴しています。また、羊の首に迷子にならないように付けられたベルを意味しているという説もあり、人々が迷わずに神のもとに帰れるようにという意味があると言われています。

キャンドル(ろうそく)には、「世の光」であるイエス・キリストが象徴されています。このキリストの光によって照らされた私たちが、この世の闇を照らす光となることができるようにとの祈りが込められています。クリスマス・イブのキャンドルサービスにも同じ意味があります。ツリーを飾る電球やLEDによるイルミネーションは、このキャンドルが変形したものだと言われています。

リンゴやそれを模した赤い玉が飾られているのもよく目にします。これは、エデンの園にあった知恵の木の果実を象徴していると言われています。16世紀のドイツでは、クリスマス・イブに教会の前で、キリスト降誕劇の一部として、エデンの園におけるアダムとイブの劇が演じられていました。舞台の中央には知恵の木が置かれていて、これがクリスマスツリーの起源だという説もあります。

クリスマス・オーナメントには、ヒイラギもよく登場します。ヒイラギのとげはイエスにかぶせられた茨の冠を、赤い実はイエスの額の血を象徴しています。ヨーロッパでは、クリスマスは暗く寒い冬であり、冬でも枯れない常緑樹であるヒイラギの緑と、明りを思い起こさせてくれる赤い実が、明るい春への希望を与えてくれたのでした。クリスマス・カラーといえば赤と緑なのも、このヒイラギから来ていると言われます。

クリスマスツリーに、縞々の杖のようなものが飾られているのを目にしたことがあると思います。これはキャンディ・ケーンと呼ばれ、羊飼いたちが使っていた杖を象徴しています。なぜ縞々かというと、ドイツでクリスマスに食べられていた白い杖のようなキャンディーを、20世紀の初頭にアメリカのキャンディ製造業者がストライプ模様にしてヒットさせたからです。杖の先が曲がっているのは、羊飼いが迷い出た羊を引っかけて群れに戻すためであり、そこから助け合いの心を象徴しているとか、キャンディの硬さは岩のように堅い信仰を表しているなどという説もありますが、定かではありません。
その他、松ぼっくりや麦は豊穣の、リボンは良い心で永遠に結びあわされることの象徴といわれています。

参考資料 /女子パウロ会公式サイト「Laudate」キリスト教マメ知識ほか

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