絶望の時代における希望

カトリック平塚教会報 第94号 2012年 8月 12日発行

平塚教会主任司祭 トーマス・テハン

アイルランドと英国のメディアの話題をさらった悲劇的な事件がありました。その事件は、絶望の時代において希望を持つ意味を教えてくれています。アイルランドの若い夫婦が英国のウェールズで休暇を楽しんでいました。その夫婦には1歳になる男の子がいました。またその時、夫人は妊娠していました。その夫婦が車で走っていたその道路の反対車線から、ある22歳になる若者の車が突っ込んできたのです。実は、その若者が書いた「自殺したい」と書かれた遺書が見つかり、警察が探していたのです。若者の車は夫婦の車に頭から突っ込み、1歳の男の子とお腹の中の子どもが亡くなりました。夫婦は今でも重体です。この夫婦は2年前に結婚したばかりで、皆がショックを受けました。特にこの夫婦が育った村の人々は、大きな衝撃を受けました。この事件について、分かっていない疑問点がたくさん残っています。

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アイルランドにいる間、私は兄にメイ叔母さんのところに車で連れて行って欲しいと頼みました。彼女は老人ホームに入所しています。私は老人ホームに事前に訪問を知らせずに、メイ叔母さんのところに行きたいと言いました。以前、姉がホームに電話連絡をした際、メイ叔母さんは訪問に応じることができないだろうと言われていたからです。兄と兄嫁、姉と私は、ダブリン市の北側にある老人ホームに出かけました。ホームに到着するとすぐに、叔母の許に行くのは、一度に二人までにしようと決めました。私は姉と二人で叔母の許に行きました。メイ叔母さんはベッドに起き上がっていました。私たちを見つけると、叔母は右手を挙げて私たちを歓迎してくれました。叔母は92歳にもなるので、身体が大変弱っています。私は叔母に私が何者であるかを告げました。すると彼女は、私のことがわかったのでしょう、お辞儀をする動作を始めました。短時間の滞在の後、別れを告げる際、私は叔母に祝福して欲しいかと尋ねました。叔母は頭を下げることで祝福をしてほしいと意思表示をしました。そこで私は叔母のために祈り祝福を与えました。叔母は再び右手を挙げて別れの合図をしました。全てが思っていた以上にうまくいったので、姉と私はとても喜びました。私はすぐに、兄と兄嫁にこの素晴らしいニュースを伝えました。ところが彼らが叔母の許を訪問した際、叔母はぐっすりと眠っており、彼女と意志の疎通を行うことはできなかったのです。彼らはひどくがっかりしていました。私が叔母に祝福を与えたと聞くと、彼らはその祝福が強力だったに違いないと言いました。そこで姉の家に戻った時、彼らは自分たちも祝福が欲しいと言いだしました。今年は、彼らの金婚式の年だったのです。

つい最近、私は、ベルファストという町にある「タイタニック博物館」を訪れました。タイタニックがベルファストを出港し、氷山にぶつかって大西洋に沈んでから100年になります。タイタニックは世界で最大の客船で、当時は絶対に沈まないと考えられていました。この博物館はこの客船が建造された場所に建てられました。この博物館を隅から隅まで見ることができたのは、素晴らしい経験でした。というのも、ここは物造りの町として有名なベルファストの力強さをとてもよく象徴している場所だからです。例えば、建設中のタイタニック号の中で働くとはどのような感じだったかということの再現、タイタニック号の進水式の様子、沈みゆく船にまつわる様々な話、海底でこの船を発見したこと、英国におけるその後の調査を知ることができるのです。これら全ての体験ツアーを、2時間30分程度で終わらせることができます。この船が沈んだことは大災害ではありましたが、大きな痛手を被った町に新しい将来像を描くことは可能なのだという希望を、ベルファストに与えています。

同じように、聖母の被昇天は、楽しいときも苦しいときも変わらぬ信仰を持ち続けた聖母マリアに対する神からの贈り物なのです。聖母マリアは、希望を持って生きることによって、神の契約が成し遂げられることを示しました。私たちも神の契約の成就のために集まっているのです。

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