あなたは今でも 〈驚き〉 の心を持っていますか?

 教会が、多くの人たちの居場所となるために、どのような方法があるのか。この特集では、主に子どもたちの居場所づくりに取り組んでいる2つの教会の事例を紹介します。

藤沢教会「きずなレッジ」

 カトリック藤沢教会を学習支援事業の拠点として活動する、「特定非営利活動法人 湘南ライフサポート・きずな」の相談員であり、社会福祉士でもあるS・・さんからお話をうかがいました。S・・さんは、雪ノ下教会の信徒です。

「特定非営利活動法人湘南ライフサポート・きずな」では、藤沢市からの委託を受けて、国籍を問わず生活保護受給世帯、生活困窮世帯の児童・生徒、そして高卒認定試験の受験を希望する若者を対象とした学習支援事業「きずなレッジ」を、2013年11月から行なっています。「きずなレッジ」では、小学生から高校生の児童・生徒を対象として、学習機会の習慣化、基礎学力の向上、進学・居場所といった支援を週3回行っています。
児童・生徒が参加するかどうかは自由です。毎回約40名の児童・生徒が、開催時間帯に入れ替わりで参加します。学習支援に当たっては、できるだけ分かりやすく接して教えたいため、先生を務めてくれるボランティア講師の協力を得て、できるだけマンツーマン形式をとっています。また、海外から日本に来て、まだ日本語の理解や読み書きが難しい児童・生徒には、日本語の学習支援もできる範囲で行っています。
学習支援を始めてから、今年で12年目を迎えました。始めたころ小学生だった児童も成人して社会人になり、現在ボランティアとして「きずなレッジ」を支えてくれている方もいます。
月に1回、児童・生徒と保護者を対象に食事も提供しています。コロナ禍以前は食事を作って、皆で一緒に食べていましたが、感染予防の観点からお弁当という形での提供になり、現在もそのまま続けています。
この食事の提供は、あるボランティア講師が2019年の10月ごろに、「参加者みんなで一緒に食事をしよう」と提案したことから始まりました。お弁当のためのお米や野菜は、藤沢市の農福連携事業や個人からの寄付でまかなっています。食事作りは、藤沢教会の福祉部を中心としたボランティアの方々に務めていただいており、活動をお知りになった方達からは、寄付金をいただいています。
お弁当のメニューを考えてくれるのは、管理栄養士になるために大学で勉強している「きずなレッジ」の卒業生です。ここを卒業した児童・生徒達は、後輩に優しく接し、同じ境遇を分かち合う良き理解者になってくれています。卒業生が小さな児童の面倒をみたり、通訳してくれたりというように、「きずなレッジ」を通して結ばれた絆が、良い形で引き継がれています。このことは、長く続けてきたことによる大きな喜びです。
活動を続けていく中では、困難を抱える場面もありました。そんな時、誰かの大切な場所になって欲しいとの思いと願いが、私たちを支えてくれました。私自身、雪ノ下教会の中高生会を通じて仲間から救われた経験が、今の私を助けてくれています。
児童・生徒の抱えている悩みは、一昔前は目で見て分かる場合が多かったのですが、今は複雑になり、もう少し早く「きずなレッジ」と出会っていたら、何かお手伝いできたかもしれないのにと、悔やむ場面も多くなりました。だからこそ、ここにいる間は暖かくしてほしい、実家のように過ごしてほしい、もがき苦しむ中でも人として成長してほしい、と願うばかりです。


保土ヶ谷教会「こひつじ食堂」

 カトリック保土ヶ谷教会を会場として活動する「こひつじ食堂」。その代表を務める保土ヶ谷教会信徒のS・・さんから、お話をうかがいました。

 「こひつじ食堂」は、毎月、第3木曜日の午後4時半にオープンします。毎回、80食のお弁当が用意され、お弁当がなくなったら終了です。お弁当は、高校生以下の子ども100円、大人300円で提供されています。
 「こひつじ食堂」では、集まった子どもとのコミュニケーションを大切にしています。ただお弁当を配るだけで終わらないように、開店30分前から開場して、さまざまな遊びや絵本の読み聞かせなどを企画しています。ボランティアで参加してくださる方には高齢の方もいらっしゃるので、ゴム跳びやけん玉やメンコなど、昔ながらの遊びを子どもたちに教えてもらうこともあります。集まった子どもたちが、自分は祝福された存在であり、多くの人が気にかけてくれているのだと、感じられるように心がけています。
 来るのは、8割方が近隣の小学生です。乳幼児連れの親子も来られます。小学生は、ほぼ子どもだけでやってきます。どちらかといえば友達と馴染むのが苦手で、大人とおしゃべりしたいタイプの子も来てくれるようになったので、そんなところにも続けていく意味があると思っています。
 「こひつじ食堂」の前日、私は近所の公園にチラシを配りに行っています。「明日、こひつじだよ」と声をかけると、「わかった、お母さんに言わなきゃ」などと反応してくれる子どももいます。子どもたちには、「必ずお家の方の許可をとってから来てね」と伝えています。
 子どもたちが聖堂に興味を持って、「あそこはどうなっているの?」と聞いてきたら見せてあげるし、マリア像に興味を持ったら「あれはマリア様だよ」と教えてあげるようにしています。「こひつじ食堂」に来ることで、子どもたちが原体験として、「教会って安心できる場所なんだ」という印象を持ってくれれば、これほど嬉しいことはありません。
 コロナの少し前に、料理の先生をやっておられた信徒の女性が、「子ども食堂というものを、元気なうちに教会でやってみたい」とおっしゃったことが、「こひつじ食堂」のそもそもの始まりでした。私も子ども食堂には興味があって、講演会に行ったりしていたので、教会内で4、5人で集まって、「やりたいね」と話すようになりました。
 コロナが明けたころ、先ほどの料理の先生が、「もうやってちょうだい。私も歳はとる、今ならできるけど後になったらできないから」と言ったことがきっかけで、2022年秋に、教会の中に「子ども食堂設立プロジェクト」が立ち上がりました。まず、磯子教会や片瀬教会でやっている子ども食堂を見学し、地元の社会福祉協議会(社協)に電話で問い合わせました。
社協の方は、最初は半信半疑だったようですが、説明に行くと好印象を持ってくださり、町内会や民生委員の方を招いて、私たちの話を聞いていただける会をアレンジしてくださいました。その年の12月には試食会に漕ぎ着け、翌23年1月19日に、第1回「こひつじ食堂」を開催しました。以後、今年の12月までに計36回開催しています。
 「こひつじ食堂」は教会とは別の外部団体で、私を含め9人のメンバーが役員をやっています。特に法人格を持たない市民ボランティア団体で、役員9人のうち8人は信者さんです。約30名のボランティアが登録してくれていますが、その中には信者さんではない方が5、6名おられ、学生ボランティアも来てくれています。
ボランティア全員が、社協の「ボランティア保険」に入り、参加者全員は「行事保険」に入っています。活動中に事故が起こったり、食中毒を出したりしても、これらの保険でカバーできることになっています。
 ボランティアは、「調理ボランティア」と「会場ボランティア」に分業しています。調理ボランティアは、当日の午前11時から調理器具の消毒を開始して、午後3時半ぐらいまでに調理を終えます。そこから会場ボランティアが引き継いで、4時に子どもたちが来場し、全員が退場するまでいてくださいます。
 特に気を使っているのは衛生管理です。調理の中心となる2名が、講習を受けて衛生管理責任者になり、毎回目を光らせてくれています。調理ボランティアには必ず衛生管理の冊子を配って、説明を受けてから参加してもらいます。
 もうひとつ大事にしているのが、地域の中で活動しているという意識です。町内会長さんとコミュニケーションをとったり、地域の小学校に挨拶に行ったりもしています。子ども食堂同士の情報交換も大切なので、近隣の子ども食堂との交流会にも参加しています。
 食材は、寄付と助成金で賄っています。子ども食堂向けの助成金は市や県、民間から様々なものがあるので、情報を集め、申請しています。多くの助成金は宗教的活動が目的でないことが応募の条件となるため、教会の外部団体であることが申請の上で必要だと考えています。
 教会を会場にして子ども食堂をやることは、シノドスの「ともに歩む教会」という精神のひとつの表し方だと思っています。地域の人と共に歩むのはとても面白いし、そこに愛の広がりを発見することもできます。もしやってみたいとの思いがあるなら、ぜひチャレンジしてみることをお勧めします。


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