言葉は肉となって、わたしたちの間に宿られた

カトリック平塚教会報 第116号 2019年12月22日発行

平塚教会主任司祭 トーマス・テハン

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  • クリスマスは家族のお祝いです。私が子どものころは第二次世界大戦直後で、まだ食料や物資の配給が行われていました。旅行さえ制限されていました。長きにわたる欠乏の時代でしたが、クリスマスとなれば話は別でした。地元のお店には新商品が山積みになり、ほとんどの親たちは、家計はさておき、子どもたちが欲しがっているおもちゃや、お祝いのための食べ物や飲み物が十分そろっているかを考えました。
    当時、待降節には四旬節と同様に、お祈りだけでなく、断食や献金をしていました。待降節はクリスマスイブまで続き、その後はクリスマスのお祝いとなります。食卓にはクリスマスの花、テーブルクロス、ロウソク立て、ナイフやフォークが並び、ブランデーソースを添えたプラムプディングやクランベリーソースを添えた七面鳥も登場します。もちろんクリスマスケーキも、午前のミサ後に出されます。その日の食事は、いつも午後3時になってしまうからです。クリスマスは家族のお祝いとして、暖炉の火のそばに座って、皆でトランプをして過ごすのです。皆がくつろぎ、大きな喜びに満たされ、世の中の苦労などしばしの間忘れ去ってしまいます。
    このようなクリスマスは、あらゆるものが豊富で一年を通して多少なりとも食べものが得られる現代のクリスマスよりも、もしかすると最初のクリスマスに近いかもしれません。身ごもったマリアは、利用できる宿もないのに、旅をせねばなりませんでした。ヨゼフは、誰にも気づかれない場所で、母と子を養わなければならない不安を抱えていました。小さな光しかない状況に対処するには、信頼と信念が必要でした。
    しかしながら、これは神の摂理によるものでした。物は不足していても、愛とあたたかな歓迎に満ちていました。幼子イエスは、マリアとヨゼフのあふれる愛に受け入れられていたのです。マリアは、必要なものはすべて胎内で与えながら、イエスを育ててきました。イエスは他の人々とのふれあいを求めて、そこを離れていきます。イエスは、思いやりもなく、自分たちの楽しみに興じる社会の冷たさにさらされました。両親が自分の生活を案じ、身の安全のためにエジプトへ逃れていくのだということを、イエスは子どもながらにわかっていました。マリアとヨゼフは、不安や苦しみを感じながらも、マリアが神様の御言葉を産んだという事実を見失うことはなかったのです。
    御言葉は貧しく謙虚な幼子となって、私たちの世界に来られました。私たちもまた、誕生や洗礼のたびに明かされる、この神秘について考える機会をいただいています。私たち一人ひとりが、主の創造物に対する愛の神秘であり、その証なのです。すべての子どもたちが、胎内の安全と暖かさを求めますが、神の望む人となるためには、そこから出て、愛や苦しみを通して成長が得られることを理解する必要があります。
    この画像には alt 属性が指定されておらず、ファイル名は f713d54cadeb56c9bcc1d4e0bc4b7975.jpg です私たちの世界では、苦しみに終わりはなく、愛がなければ希望も失ってしまいます。ですから、愛を感じることができる時間や、私たち自身の存在や価値を感じることができる受容の時間は大切なのです。子どもは受容や愛を言葉にして表現することができません。けれどもそれを、目、微笑み、そして喜びの表現によって伝えることはできます。私は、子どもたちが家族や友達とともに互いに祈りを捧げる活動に参加している時、両親に抱かれた子どもたちの反応に勇気づけられてきました。同様に、幼児洗礼はこの神秘に近づくことができるもうひとつの素晴らしい機会だと言えます。
    イエスが最初のクリスマスの時、どのような表情をしていらしたかということを、想像してみてもよいかもしれません。(訳:M.U)

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