聖母被昇天の奇跡

カトリック平塚教会報 第97号 2013年 8月 11日発行

平塚教会主任司祭 トーマス・テハン

毎年、私たちは「聖母マリアの被昇天」を祝います。教会の暦の中では、多くの人々が祝う主要な祝日です。
聖母マリアが地上での生命を終えられる時、神の恩寵により、肉体も霊魂も天国へ迎え入れられたというのがこの神秘の核心となります。つまり、聖母マリアは人生最後の段階で「死」を経験していないということです。この神秘に戸惑い、理性をもって考えても、なかなか理解することができません。

私たちが生きている時代は、不信心の時代であり、人々の生活が変化のない繰り返しとなってしまっています。ですから多くの人々の人生において、奇跡や矛盾に出会うことで、次の新しい局面が見えてきます。それは、単調な繰り返しとなってしまった人生に、色彩や背景、そして意味を与えてくれます。「聖母の被昇天」は、多くの画家によって描かれており、十分に磨かれていない私たちの想像力を働かせる源泉となりうるものではないでしょうか。

今年の夏のはじめ頃、私はアイルランドにいました。多くの人々が、今年の冬は長く、春はほとんどなかったと言っていました。ニュースによれば、農家では家畜に与えるエサが底を突き、フランスからエサを輸入していたとのことでした。冬の雨で濡れた牧草地に出してもらうことができずに、多くの家畜が死んでしまいました。草花の開花も例年より6週間も遅れていました。
幸い、私がアイルランドに到着した時には、運良く暖かさと陽の光が少し戻り、草花も成長し、一週間もするとアイルランドは再びエメラルドの島になりました。島の自然は最も美しい時期となり、人々も大いに楽しんでいました。

私は新聞で、ジョン・ウォーターズという記者による記事を読みました。経済危機や、厳しい天候不順に対するアイルランドの人々の対応と、OECDのBetterLifeIndexが最近実施した調査について次のように触れられていました。「このOECDの調査では、健康、収入、住宅、教育、コミュニティー、市民活動といった各項目で、ライフスタイルや今後の展望に関する指数を示しているが、その中で、アイルランドの満足度は10段階中7で、OECD平均の6.6を上回っている。また、幸福度についても、ドイツ、イギリスよりも高いレベルを示す結果となっている」
この記者は、「アイルランドの多くの人々は今でも、金銭では測れない様々な方法で人生を見つめることができるようだ」、という結論に達したようです。
アイルランド人が、どうしてうまく困難を乗り越えられるのかを理解するために、記者は次の事実をあげていました。
それは、アイルランド人にとってイエス・キリストの復活がこの上なく非常に大切なことであり、この奇跡がなかったら全てがまったく異なったものになってしまうほどの出来事であったということです。つまり、アイルランド人は、最悪の状況下におかれても、常に変化への希望があり、困難を乗り越えることができるわけなのです。

今、日本の社会はどのような方向に向かっているでしょうか。政治家たちは、日本を経済的にも軍事的にも強い国にする目標を掲げているようにも思えます。憲法改正を支持する人々は、個々人の権利を犠牲にした中央集権を主張しているようにも見えます。こういった動きは、幸せな社会をもたらすことができるのか、できないのか。おそらく、今、一人ひとりが立ち止まって考えるべき時なのでしょう。私たちは、人生における精神的な側面を、もっと重視する必要があるのではないでしょうか。

「聖母被昇天の祝日」は、神の祝福を受けた聖母マリアの生涯において拠り所とされた価値観について振り返り、深く考えをめぐらせる機会となるかもしれません。

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