2012年の復活祭にあたって

カトリック平塚教会報 第93号 2012年 4月 8日発行

平塚教会主任司祭 トーマス・テハン

皆様にとって、喜びに満ちたご復活祭でありますよう、お祈りいたします。私たちは皆、3月11日が東日本大震災の一周年にあたることを知っています。この一年の間に、日本中で様々な変化が起きたと私は感じています。多くの人々の生活を奪い破壊してきたものに、いかに人々が立ち向かおうと努力してきたかを、私たちは報道を通じて常に知ることができました。復興したことも沢山ありますが、多くは未解決のまま残されています。善意を持った人々は、被災者が本当にいま何を必要としているのかと、色々な方法で思案し続けています。私たちキリスト教共同体に属する者にとって、いま社会で必要とされていることに応える道を、神の御言葉の中に見つけ出そうとするのはよいことだと思います。

私たちは、主の祈りの中で、「御国が来ますように。御心が天に行われるとおり、地にも行われますように」と祈ります。イエスは、その説教の中で、神の御国は近づいていると説かれました。イエスは、弟子たちをご自分の周りに呼び集め、その御言葉と行動により、病人を癒し、仲たがいしている者たちを和解させ、囚われた人を解放し、神の創造した世界に正義と平和がもたらされることを示されました。イエスは、御国には二つの大切なもの、すなはち「今すでに」という側面と「未だこれから」という側面がある、と強調されています。イエスは食事を人々と分かち合うことを好みました。そして、神の御国を説明するために、たびたび食事をたとえに使われました。イエスはたとえ話で、救い主の食事とはすべての人々が招待されている食事である、と話されました。イエスはどんな人でも受け入れようとなさいました。たとえそれが、異教徒であったとしてもです。イエスは、神の御国の本当の到来は、すべての者が、キリストのうちに、父なる神と和解した時にこそ実現する、と明言されています。

2012年のこの状況の中で、キリスト教共同体における神の御国とは何であるかを、私たちはよく考える必要があります。神の御国のことを正しく理解すれば、私たちがどのように一般社会とかかわっていったらよいかについて、その確かな答えが出てくるはずです。あるいは、「教会は神の御国ですか?」という質問が出てくるかもしれません。多分、多くの方はそうですと答えるでしょう。そして、私もその答えは問題がないと思います。しかし、もし誰かが私に「教会は神の御国と同じですか?」と聞いたならば、私はそうではないと答えるでしょう。神の御国は、教会よりもっと偉大なものなのです。教会は、神の御国の存在の目に見えるしるしであるとともに、神の御国で求められている務めを果たす役割も持っています。
たとえて言うならば、教会は、神の御国をサーチライトで照らし、そこに向かって時代の高波を航行する船のようなものです。そして他の小さい船は、その光を頼りに神の御国に導かれてゆきます。あるいは教会は、船尾に出来るだけたくさんの魚を集めた網をひいて、神の御国の岸辺に向かって進んでゆく船のようなものとも言えます。後のたとえは教会の御国へ向かう姿であり、先のたとえは教会の現在の姿に当たります。

第2バチカン公会議は、教会が世界の国々の光となること、教会が希望と喜びを今日の世界に広げるコミュニティとなることを期待しています。私たちのコミュニティが、今回の被災者の方々と共に歩んでゆこうという姿勢を示したことには勇気づけられました。たとえばこの教会の信者の中には、仮設住宅に住んでいる方たちのためにと、使い終わったペットボトルを湯たんぽとして使えるように、それに被せる毛糸のカバーを編んで送っている人々がいます。また、だれでも参加できる持ち寄り料理の食事会も開催されていました。去る1月22日に行われた、ブランチフィールド神父の金祝のパーティーもその良い例です。そこでは、沢山の食事が準備され、大磯・平塚の共同体の皆さんがお祝いの行事を楽しみました。キリストのうちに開かれ、キリストと共に神のみ国に奉仕する共同体になろうではありませんか。

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